食生活と身体の退化
〜未開人の食事と近代食・その影響の比較研究〜

W. A. プライス著、片山恒夫訳

第16章 未開人の虫歯予防法(前半)


前章で論じたのは、未開種族と近代化した集団とでは食事の面で基本的な相違があるのかどうかという点である。本章で考察しようと思うのは次のような問題である。すなわち、身体を形成したり回復を図るといった点で未開人たちが利用している食物と同等の作用を果たす食品を、退化病に冒されている近代化した集団に供給して利用させれば、虫歯を予防したりその進行を喰い止めたりできるのかどうかを明らかにすることである。

栄養学的な方法によって虫歯を予防するという問題については、2つのアプローチがある。一つは、臨床の結果を提示することであり、もう一つは、虫歯に対する免疫を高めるのに効果が見られた食事方法の特徴を検討してみることである。

現存の未開種族を分類するに当って、彼らが住んでいる自然環境のあり方や、その自然環境からどのような食物を彼らが得ているのかという見地から、グループ分けすることができるように思われる。私は未だかって、植物性食品しか摂らずに立派な身体を形成し、維持してきた集団を見たこともない、という事実は重要な意味をもっている。そうしようとして失敗に終ったと思われる集団はかなりある。利用しうる動物性食品の種類が豊富な集団もあれば、限られた集団もある。

前章で検討したのは、効果の高い食事にはかなりの量のミネラル、炭水化物、脂肪、蛋白質、水溶性ビタミンに加えて脂溶性ビタミンを供給する食品が含まれていたということである。

ビタミンDは植物には無いので動物性食品に求めなければならない。この点を手掛かりにして、効果のありそうな未開種族の食事を幾つかのグループに分けてみることができるだろう。まず最初は、効果の高い乳製品から、これまでに知られている脂溶性ビタミンを含んだ脂溶性賦活剤を摂取している者。この集団には、高地アルプスのスイス人、アラブ人(ラクダのミルクを利用している人たち)、アジア系の諸種族(羊やじゃこう牛を利用している人たち)が入る。第二の集団は、野生であれ家畜化したものであれ動物の臓器や鳥類の卵を相当量利用している者。これには、極北地にいるインディアン、バッファローの狩猟を行なっている平原インディアン、それにアンデス山地に住む諸種族が含まれる。三番目は、海洋性の動物をかなり摂っている者で、これには太平洋上の島々に住んでいる人々や世界中の海岸地帯に住む人々が入る。第四に、小動物や昆虫を利用している集団がある。これには内陸部に住むオーストラリア原住民やアフリカ内陸部の諸種族が含まれる。

上に述べた集団で、2種以上の供給源から食物を得ている者は多い。どの集団も、適当量の身体形成物質を動物および植物の組織から確保している。供給が十分でありさえすれば、ミネラルやビタミンの供給源が何であるかはあまり重要なことではない。我々のように近代生活を送る者にとっては、必須食品をどれほど効果的に、また容易に入手し得るかは、集団の所在地によって左右されることになる。明らかに海岸に近い者にとっては、海から得るのがもっとも便利であるし、内陸部や極北の地の住人にとっては、乳製品であるとか動物の臓器が入手しうる唯一の食料源であるだろう。我々の当面している問題が、ここで述べたことのように単純なものであれば、どれほど幸福か知れない。しかしながら、まず何よりも我々には自分が好きな食物だけでなく、むしろ我々の身体が要求するものを摂らせる意志の力であるとか性格の強さが必要なのである。また他の問題もある。というのは我々は近代的といわれる生活では体を動かすことをせず、余りエネルギーを必要としないので、成長や体力の回復を促進する食品などは余り食べようとしないのである。それはつまり、空腹感があるとしても単に熱や力の源となるもの、すなわちエネルギーさえ補充すれば良いということになって、身体形成に必要なミネラル類や他の有機性栄養素まで摂ろうということにならないからである。さらになお問題がある。すなわち、上述したように、乳製品、動物の臓器、海産食品といった脂溶性賦活剤の供給源は、それらの動物がどのような食べ物を摂っているかによって、脂溶性賦活剤やビタミンの含有量に大幅な差が出てくるのである。カロチンが極端に少ない第三等級の牧草で飼われている牛は、丈夫な子牛を産めないばかりか、そのミルクで健康な子牛を育てることすらできないのである(第18章を参照せよ)。

国際連盟の栄養に関する委員会は、ミルクや肉を適度に生産するには、1頭当たりどれほどの放牧面積が必要かということについて概算を行なったことがある。大都市近辺では、人口が稠密であることと地価が高いことから、乳牛飼育に十分な面積をとることが不可能になっている。こうした事情によって、移入した飼料による舎内飼育を余儀なくされている。牛というのは大量に飼われてこそ、ミルクやバター脂肪の生産を量的にも維持していくことができるのである。残念なことに舎内で飼育すると、クリーム分やバター脂肪ばかりが多くなって、重要な脂溶性ビタミンの含有量が少ないミルクになってしまう。これは我々が当面している現在の問題の中でもきわめて重要な問題である。バターは硬く固まっている時が船輸送にもっとも好都合である。そしてバターの硬さは、牛に与える餌によって変ってくる。それらのことがバター業界にとっては重要な問題となるわけである。私は、1927年以来、世界各地から乳製品、主としてバターを取り寄せ、ビタミン含有量の分析を行なってきた。このサンプルは、数年にわたって同一の場所から普通は2ないし4週毎に送ってもらったものである。これらにはすべて、ビタミン含有量に季節的な上下のあることがわかった。それが高いレベルにある時は、いつでも急速に成長している若い植物性飼料が摂取されている時期と一致しているのである。植物の生命には、季節によって変化する波があるので、バッファローが秋から冬にかけては南方へ、春には北上するという移動が行なわれることになるのである。バッファローたちは、およそ1日に12マイルの割で移動し、南部で産まれた幼い子牛にビタミンのもっとも多いミルクを与えるために、太陽の移動につれて旅して行くのである。こうした栄養上の波があるので、それが鳥の移住をコントロールしていることも明らかである。高いビタミン含有量のあるミルクを作るのに、断然効果がある植物性飼料として私が発見したのは、急速に成長しつつある小麦やライ麦の若い時期の牧草である。からす麦や大麦の牧草も優れたものである。私の臨床経験では、その他の点では十分な食事にこのビタミンの高いバターを少量添えれば、虫歯の進行がいつでも止まり、同時に活力や健康一般の改善がみられたのである。

同じく、脂溶性ビタミンを補給する卵の価値も、家禽が食べる飼料に直接依存しているのである。卵の多産性もビタミンEを含むビタミン類の含有量を計る直接の尺度となる。

海産食品は全体として、脂溶性ビタミンの価値ある供給源であるから、世界中で虫歯を予防することだけでなく、活力に満ちた人間を産み出すのに効果のあることが知られている。残念ながら、新鮮なままでそれを輸送すると費用がかかるので、このことが普及を妨げる要因となっている場合が多い。魚を乾燥するといった方法で、ひじょうに効果的にビタミン類を含んだ食品の価値を保存している未開種族は多い。ところが我々現代人は缶詰にするといった方法で腐敗を防いではいるけれども、特にビタミンAといった脂溶性賦活剤を有効に保存することはできていない。

特に、肝臓などのような動物の臓器類はビタミンの宝庫であるから、ある種の脂溶性賦活剤の重要な供給源として、肝臓から脂肪を抽出して肝油にし、各地に送ればよい。現在では処理技術も大いに改良されているので、こうした種類の油も品質は向上してきた。しかし、その他にも、毎日質の良い乳製品を利用することは人間にとって大いに役立つ種々の物質を摂取していることになる。

成人の健康を維持し、組織の回復を図るには、数種のミネラルを適当な量だけ好ましい化学的形態として供給することが最重要だということを私は前章で述べたつもりである。どの未開種族の食事をとってみても、近代化された未開人や近代文明に浸っている人々が欠陥食品でやっと補っているミネラルよりも数倍もの量を含んでいることがわかった。

近代の食品業は、空腹を満たすエネルギー要素を残してはいるものの自然の食品がもっているある種の身体形成物質のほとんどを故意に取り去ってしまっている。例えば、精白粉を作る時には、燐分やカルシウム分の80%すなわち5分の4はたいがい失くなってしまうし、それとともに、胚芽がもっているビタミンやミネラルも取り除かれてしまうのである。婦人の生殖能力の低下に大きな影響を与える要因の一つとして、直接関わっているのが、小麦粉の精製過程でビタミンEが除去されることであるということを示す証拠がある。小麦の胚芽は、ビタミンEの供給源として我々がもっとも容易に利用し得るものである。ビタミンEは、成長や器官の機能を大幅に統御している脳基底にある脳下垂体腺にとって栄養成分となるものであるが、その腺は人間の精神的な諸類型を造り出すことに関与しているものであるから、ビタミンEの役割が重要であることは明らかである。同じょうに、小麦のビタミンBを含む胚芽を取り除くと、精粉後に起こる酸化も加わって、身体形成賦活剤の消耗が起ってくるのである。

精製した砂糖には、ほんのわずかな身体形成あるいは回復に関わる要素が残っているだけである。砂糖は良い味がある他には、熱とエネルギーを補給して飢えを満たすだけである。我々の食物にあっては、熱やエネルギーを生み出すが燃焼に用いられなかった余分の要素は、通常、脂肪として貯えられることになる。前章で我々がみたのは、我々の近代的な食事に供給される食物のおよそ半分が、身体形成や回復に関わる要素を、全くあるいはわずかしか含んでおらず、ビタミンに至っては全くないということであった。アメリカ人の熱やエネルギーのおよそ25%は、砂糖だけで供給されているのであるが、それは生命が自然にもっている健康を保つ秩序ある過程を妨害するのに強く作用している。残念なことに、1人当たりの砂糖使用量は増加してきている。したがって、我々は、欺瞞的で体に負担ばかりかける有害で益の少ない食品を根本的に減らし始めなければならない。近代文明の栄養面でこうした大きな変化が起これば、大多数の人々の虫歯を効果的に予防することになる好ましい条件が生じてくることにもなろう。とはいえ、急速に成長しようとする要求を次々と満たさねばならない多くの子どもにとってはそれで十分だというわけではない。私は、高校や寄宿学校の女生徒に虫歯の罹患率が高く、それに次ぐのが寄宿学校の男子生徒であることを発見した。こうした集団では、子どもを育てている最中の母親より多く虫歯にかかってさえいるのである。

後に、技術的な問題を論じる際に、血流中の栄養分によってコントロールされる唾液の中の虫歯予防に関わる要因や口腔予防法の役割について考察してみようと思う。

ここで、進行中の虫歯にみられる特徴について、何点か触れておくのがよいであろう。虫歯の過程は歯の中から始まることは決してなく、常に好んで外から始まるのであって、歯と歯の間の接触点あるいは穴や溝のような外部の諸点から始まる。そしてそれは不正な歯列の場合には特にそこから起こりやすい。歯が歯肉で覆われている間は決して虫歯になることはないが、条件が好ましくなければ、生え出た後、すぐにでも虫歯になるのである。もし唾液が正常であるなら、歯の表面は生え出た後1年の間に徐々に固まってくる。虫歯の進む過程に様々な要因が作用するにあたって、それらがどの程度重要であるかについては多くの学説があるけれども、すべてに共通している見解は、バクテリアが産出する酸によって部分的に歯質が融けるのだという点である。虫歯に関する多様な理論、相互にみられる本質的な差異は、カルシウムを融解する有機体の抑制法やその有機体の量や活動に関する捉え方の差によるものである。未開人が行なっている方法は、歯を良好な状態に保つ食事を行なうこと、すなわち適切な食べ物を組み合わせることによって虫歯を防ぐというものであった。私は、唾液が正常であれば、歯が生えた後に固くなることに触れたばかりである。これは、木が石化する過程ときわめて類似した鉱化の過程によって起こるものである。歯科医師は、この問題が解決されるまで数十年も待っていたがために、その過程全体という観点から予防に臨むといった活発な動きがとれなかったのである。

歯には4つの層構造がみられる。第一層は、血管や神経が通っている歯髄である。この層は、歯冠部も歯根部も、内部のこの歯髄から栄養を摂っている象牙質すなわち歯の基質によって覆われている。歯根の象牙質は、セメント質によって覆われているが、これは顎骨に歯根を取り付けている歯根膜から栄養を受け取っている。歯冠や露出した部分の象牙質は、エナメル質によって覆われている。虫歯はエナメル質ではゆっくりと進行し、象牙質では急速に進行することが多く、次に小さな穴が歯髄にまで達するのである。歯髄は虫歯が進行して露出するに至る以前に、すでに冒されているのが普通である。歯髄を覆っている象牙質が破壊された時には、いつでも虫歯は歯髄をもだめにしてしまうのである。虫歯が進み深い空洞ができている時には、脱灰した象牙質はぼろぼろになった木と同じ程度の密度しかない。栄養の面で適切な改善を加えれば、次第に虫歯は防止されるであろうが、それには次のような条件が満たされていなければならない。その第一は、唾液の質を十分に改善すること、第二は、唾液が虫歯になった部分に自由に触れることができることである。もちろん、患部が除去され、穴に詰め物がされたら、バクテリアも自動的に排除されてしまうであろう。したがって、栄養をコントロールする方法をもっとも厳格にテストしようと思えば、歯に詰め物をしなくても完全に虫歯の進行が止まるかどうかを見ればよい。とはいえ、十分に唾液の化学的成分が改良されたかどうかということもテストしなければならないが、それには2つの方法がある。もし唾液の改善が十分なものであれば、バクテリアの増殖が阻止されるばかりか、まるで皮のように腐蝕してしまった象牙質も唾液の働きで石化に似た過程によって鉱化することであるら、この鉱化した象牙質は、生命があるわけでもなく量が増えるわけでもないのに空洞を満たしていくということを記しておこう。それを鉄製の器具でこすると、密度の高い木のような感触や、時にはまるでガラスの表面をこすっているような感触を得ることさえある。そうした歯は硝酸銀で処理しても、再び鉱化した象牙質には浸透していかないが、虫歯が進行中の時に抜き取った歯では、硝酸銀は腐蝕した象牙質に急速に浸み込んでいくのである。この過程を示したのが図96であるが、その写真は、いずれも同じ子どもの乳歯であるが、一方は栄養を改善する以前のものであり、他方は、その後数ケ月が経過した他の歯である。


図96 Aは、虫歯にかかった象牙質に、硝酸銀が浸透していることを示している。Bは、栄養を改善することで唾液が良くなった後、虫歯の象牙質が鉱化し、硝酸銀がそれほど浸透しなくなったことを示すものである。

これらの乳臼歯は二次生菌〔永久歯〕の小臼歯によって生え変ってくることになった。左の歯には深い腐蝕が見られるが、これは処置を開始する以前に抜いたものである。硝酸銀が腐蝕の深部にまで達し、組織を黒くしていることに注意してほしい。右は、栄養の摂り方を変えた後、およそ3ヶ月経った時に抜いたものである。象牙質の腐蝕部はひじょうに稠密になっているので、硝酸銀は深く浸透せず、色の染まり方が薄い。

大自然が人間に与えた虫歯を防止するメカニズムを明らかにするには、他のテストをやってみることもできる。ウ蝕が歯髄にまで及んだ場合は感染するのみでなく、ついには歯髄組織は死んでしまい、汚染された口から歯根の端にある防壁の内側にまで感染経路ができあがる。これが歯の膿瘍であって、普通は当の本人もほとんどそれを知らず、感染させた細菌は、血液の流れやリンパ管によって多少とも自由に体中を通っていくことになる。これによって体の他の部分の器官や組織の退化が始まることになる。

未開種族の中でも身体に良い食事を摂っている種族の場合には、歯茎や従来ならば歯髄腔であるところまで歯が磨耗しても歯髄は露出しないことがある。つまりこうした例に見るように大自然は虫歯の穴ではなく歯髄腔内に保護地帯を造りあげたのである。こうして歯髄が露出する危険性が防がれ、それとともにバクテリアを防ぐ防御壁ができあがるのである。近代文明人の場合、こういったことはめったに起こらない。磨耗によって歯髄腔に穴があくと歯髄が露出し、病菌が進入して膿瘍ができる。栄養の内容を未開人の場合のようにすぐれたものにすれば、象牙質の脱灰によって歯髄腔に穴があいても、唾液によって石化された象牙質とはまったく異なった新しい象牙質層が作られ、歯髄組織が覆われてしまい、病菌進入の危険は完全な防壁によって防止されるのである。図97にはこのことを示す3つの例を挙げてある。左側にはクリーブランドの貧しい地域で実験的に治療を施した3人の子どもたちのX線写真を掲げている。歯髄腔と歯髄は歯の中央に黒い縞のような影として写っている。髄室まで脱灰化した大きな虫歯は、歯冠の大きな黒い部分として写っている。穴のあいた象牙質の下にある歯髄に食物を噛むときの圧力が加わり痛んだため、一時的に充填することが必要であった。しかし、3人の子どもたちの栄養が改善された後には、歯髄組織には第二象牙質ができ、閉じた髄室の中に歯髄が入ってしまうのである。この過程は図97の右側に3人の子どもたちの場合、それぞれに即して提示している。

図97に示されている子どもたちは不況の影響を受けて、家庭では食事も満足に食べていなかった。子どもたちは、週6回正午にセツルメント〔社会救済施設〕に連れて来られ補助食が与えられた。家庭での食事と歯の手入れはそのまま変えなかった。予備調査を行なったが、その内容は、子どもたちのすべての歯のX線写真を撮ること、唾液の化学分析をし、虫歯の穴の位置、大きさ、深さを調べ、身長、体重、素行を含む学業成績書を記すことからなっていた。この予備調査では、3ヶ月から5ヶ月の研究期間中、4週間から6週間毎に確認のための検査を繰り返し行なった。重視すべき点は、虫歯の原因として考えられる家庭での食事は、単に空腹を満たすだけで、組織を造り、回復力を補う成分がその食物には驚くほどわずかしか含まれていないということである。食事には、大体、砂糖がたっぷり入ったコーヒ、精白パン、植物油、精白粉で作ったホット・ケーキと糖蜜、植物油で揚げたドーナツなどが供されていた。


図97 栄養が十分改善されると、虫歯による歯髄の露出も、自然の力によって防壁が髄室内に形成されることによって次第に覆われていくということを上の写真は示している。

しかし、私たちが実験的に与えた食事には、1食分として次のようなものが含まれていた。トマトかオレンジのジュースを4オンス、高ビタミンを含む天然肝油と特に高ビタミン・バターを同量混ぜたもの1匙が食前に与えられた。また子どもたちは牛の骨髄とやわらかい肉を煮た野菜スープを1パイント飲むことになっていた。このスープに入れた肉は、あらかじめ焼くことによって肉の汁が容易に出ないようにし、そして細かく刻んで、黄色いにんじんや野菜をみじん切りにしたものと骨髄を、煮え立ったスープの中にほうり込むのである。また次には少量の砂糖で煮た果物、高ビタミン・バターを塗ったひきたての全粒麦で作ったロール・パンが食卓に出される。ロール・パンに使われる全粒麦は、毎日、電動式コーヒー・ミルで新しく粉にひかれる。それに、子ども全員に生乳がコップ2杯ずつ与えられた。食事の献立は、肉のシチューを魚のチャウダーや動物の内臓にすることによって毎日変化をもたせた。そして1回毎に、子どもたちが食べたのと同じ食事を2クォートのガラス容器に入れ、化学分析をするために私の実験室に運び込まれた。分析の結果、1食分には、1.48gのカルシウム、1.28gの燐が含まれていることがわかった。子どもたちの多くはその課程を共に過ごすようになって以来、ミネラルはより多く摂り入れられた。前章では、一般に容認されている成人に必要なカルシウムは0.68g、燐は1.32gであると述べた。したがって、実験食1食と家庭での2食を合わせると、これが虫歯予防に必要な十分な要素を提供したことは明らかである。臨床的には、この実験で、対象とした子どもたち全員の虫歯は完全に制御されたのである。

唾液を化学分析したところ(1)(2)、著しく改善されつつあることがわかった。実験の初期段階では、平均して子どもたちの唾液には抗菌物質が少なく、またあまりにも僅かなのですぐに虫歯が悪化することを心配した。しかし、6週間後には、抗菌物質の平均量がずいぶん増加し、虫歯の進行は止まったのである。夏の間5ヶ月は実験食が中断されたにもかかわらず、その間でさえも唾液の質は改良され続けていた。

特に興味深い出来事がいくつかあった。なかでもクラスで一番学習能力の低い子がもっともよくできる子になった秘訣を教えてほしいと2人の教師が尋ねて来たことだ。

虫歯は、近代の不十分な栄養がもたらす諸現象のほんの一つの表現にしかすぎないのである。

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