自分で作ってみよう! バイオディーゼル燃料: 手づくり企画「ジャーニー・トゥ・フォーエバー」



<新しいページ紹介>
●次回の「手づくりバイオディーゼル燃料セミナー」を11月30日(日曜日)に予定しています。参加者募集中! 詳しくはこちら。

●日本各地の取り組みをまとめた「バイオディーゼル日本地図」をアップしました。

バイオ燃料

バイオディーゼル燃料

自分で作ってみよう! 
バイオディーゼル燃料の作り方

マイクの「1段階 アルカリ方式」
アレックスの「2段階 アルカリ-アルカリ方式」
アレックスの「2段階 酸-アルカリ『Foolproof』方式

燃料製造器も自分で作る!
作り方


香港バイオディーゼル物語
排ガス中のNOxは問題か?
副産物グリセリンの活用法
バイオディーゼル情報集
ディーゼルに将来はあるか?
作物による植物油の収量と特徴
最後の仕上げは泡で洗う
バイオディーゼル燃料を使うときの確認事項
食糧vs燃料?
植物油そのまま燃料

ガソリン車にはエタノール燃料を
エタノール情報集
エタノール燃料はエネルギーを無駄にしているか?

バイオ燃料ML
バイオ燃料のオンライン図書館(英文)
バイオ燃料と燃料作り用具の入手先(英文)



講演・セミナーのご案内
持続可能な食とエネルギーについてお話しします

トップ
メディア掲載とコメント集
手づくり企画の紹介
冒険が始まった経緯
サイトマップ

プロジェクト
地域の自立を目指す
この企画を進める理由
Rural development
Fixing what's broken
都市農園
街が食糧を育て始めた!
有機菜園のススメ
庭で部屋で栄養たっぷりの野菜を育てる方法
土をつくる
すべての健康は土から始まる
小さな農場
自由と自立への道
バイオ燃料
地域で育てるエネルギー
太陽熱コンロ
森と人を救うソーラー・クッカー
森と土と水と
山の危機はみんなの危機
世界の種子
種がなければ食もなし
Appropriate technology
What works and fits
Project vehicles
The workhorses

インターネット
何がそんなに画期的なのか?
Internet interaction
必要な情報を探し出すには

教育企画
教育企画の活用方
バイオ燃料
太陽熱コンロ
空き缶で作る簡単コンロ
超小型風力発電機
電源のいらないローテク・ラジオ
段ボール箱の活用法
絹の姉妹
靴箱で蚕を育てる
学校菜園
土をつくる
池もつくる
手づくり天然蚊よけスプレー
ネットで参加できる教育プログラム
ネットで使える教育関係情報集


連絡先
手づくり企画「ジャーニー・トゥ・フォーエバー」
http://journeytoforever.org/jp/
〒622-0291京都府船井郡
丹波町郵便局 私書箱6号
キース・アディソン (英語)
平賀緑 (日本語&英語)
midori@journeytoforever.org

ジャーニー・トゥ・フォーエバーを応援してください!
今後ともプロジェクトを進めていくためにご支援いただけましたら幸いです。ありがとうございました。

食糧問題・食料問題のページ
〜100億人分の食糧をまかなえる世界で
なぜ8億の人が飢えるのか〜

Rubber

Pure biodiesel will eventually devour any natural or butyl rubber parts in the fuel system (hoses and seals). Check with the vehicle manufacturer and replace the parts with resistant synthetic parts (such as Viton B). See "Durability of plastics" table. Newer motors don't use rubber. VeggieVan, who speak with experience, reckon you're safe for 100,000 miles (160,000 km) even on 100% biodiesel.

Conversions:

1 US gallon = 0.83 Imperial gallons = 3.78 litres
1 acre = 0.405 hectares
1 lb = 0.454 kilograms
1 US bushel = 35.24 litres

バイオディーゼル燃料 
化学豆知識


グリセリン(glycerine):C3H8O3 三価アルコール。無色の甘味のある粘稠な液体。生物界にはグリセリドとして広く存在している。別名をグリセロール(glycerol)という。
グリセリド(glyceride):グリセリンの脂肪酸エステル。グリセリンは三価アルコールだから、水酸基の全部エステル化したもの(トリグリセリド)のほか、モノグリセリドやジグリセリドも存在する。油脂の主要構成成分はトリグリセリドである。
トリグリセリド(triglyceride):グリセリンのエステルで、すべての水酸基がエステル化したもの。天然の油脂のほとんどは脂肪酸のトリグリセリドを主成分とするものである。
エステル(esters):アルコールと酸との反応で生じる有機化合物。
エステル交換(transesterification) :ある有機酸エステルのアルコール部を入れ換えて別のエステルに転化する反応。
遊離脂肪酸(FFA: free fatty acid):一般にカルボキシル基が他の官能基と共有結合をしていない状態の脂肪酸。結合型の脂肪酸を酸あるいはアルカリ触媒によって、または酵素によって加水分解して得られる。
滴定(titration):容量分析方法の一つ。既知の濃度の試薬溶液(標準溶液)をあらかじめ秤量してある試料の溶液にゆっくりと滴下する。終点は指示薬を用いて検出する。終点までに滴下した標準溶液の体積から、試料中の反応成分の濃度または含量が計算される。

講談社「新・化学用語小辞典」、東京化学同人「生化学事典」、他より抜粋

自分で作ってみよう! バイオディーゼル燃料

バイオディーゼル燃料を作るために数百万円の機械はいらない。作り方は簡単だから、だれだって台所で作ることができる。手作り燃料は石油会社が市販している軽油よりずっと良い燃料にできる。自家製バイオディーゼル燃料の方がディーゼルエンジンを調子よく稼働し、エンジンを長持ちさせられる。それに燃料も排ガスも環境と健康にとってずっときれいだ。捨てられる運命の廃食用油からバイオディーゼル燃料を作れば、原料費がタダ同然になるだけでなく、環境にとってやっかいものの廃油をリサイクルすることができる。そしてエネルギーを自ら作る、この解放感、独立感、自信は手作り燃料ならではのもの。ここに手づくりバイオディーゼル燃料の作り方を公開しているので、じっくり読んで自分で作ってみよう!

植物油で車を動かす3つの方法

ディーゼルエンジンを動物性もしくは植物性の油脂で稼働するには、少なくとも次の3つの方法がある。この方法は未使用のバージンオイルでも、料理などに使った後の廃食用油でも同じ。

  1. 油をそのまま使う(SVO: straight vegetable oilと呼ばれる)
  2. 灯油や軽油と混ぜて使う(バイオディーゼル燃料と混ぜることも)
  3. 油をバイオディーゼル燃料に作り替えてから使う

見た目は1と2の方法が簡単そうだけれど、使い方が難しい。

1. 混ぜて使う

油を混ぜただけで「バイオディーゼル」になると思っている人が多いけれど、これは別物。植物油を灯油や軽油と混ぜて使うことは、まだ化石燃料を燃やしていることになる。もちろん軽油100%よりはきれいかもしれないけれど、まだ不十分と言う人が多い。まあ軽油に植物油を1リットルでも加えれば、その分石油の消費量を減らし、その分大気中に放出される二酸化炭素が減らされることにはなるけれど。

混ぜて使う場合は、灯油を最大30%まで植物油に混ぜる人が多い。中には植物油と灯油を半々に混ぜる人もいる。混ぜた燃料をそのまま給油して使う人もいるけれど、せめて予熱装置を付けるべきという人も。できれば植物油そのままで稼働するとき(下記参照)のように燃料系統を2系列設置するべきという意見もある。私たちも慎重派に賛成。植物油とバイオディーゼル燃料を半々くらいに混ぜて使うときも同じこと。灯油と混ぜる場合でもバイオディーゼル燃料と混ぜる場合でも、5気筒間接燃焼ディーゼルエンジンを搭載した古いメルセデスくらい丈夫で頑固な車なら問題ないけれど、最近の敏感なエンジンにはお勧めできない。

だから混ぜて使う場合にも加熱装置のついた2系列の燃料系統に車を改造した方が無難。そうすると植物油そのままで稼働するときと同じ設定になる。でもそこまで改造したら、わざわざ植物油を灯油と混ぜる必要もなくなる。バイオディーゼル燃料を植物油に混ぜて使うこともできるけれど、バイオディーゼル燃料を半分量混ぜて使うよりも、燃料系統を2系列設置して始動と停止のときだけバイオディーゼル燃料を使うようにした方が、バイオディーゼル燃料の消費はぐっと少なくてすむ(次の「植物油そのまま」参照)。せっかくバイオディーゼル燃料を作るのなら、車本体には手を加えないでバイオディーゼル燃料100%で使う方が魅力的だけど(下記参照)

化石燃料に油を混ぜて使うのは下手な妥協。ただ一つ、寒いときには混ぜて使う方法が有効なこともある。バイオディーゼル燃料にいくらかの灯油か軽油を混ぜると、燃料が曇り始める温度を下げることができる。植物油そのまま稼働のシステムも、寒いときはバイオディーゼル燃料を半分混ぜると同じ効果がある。

バイオ燃料メーリングリストへの投稿:

「僕の1998年製フォルクスワーゲン キャディー・バンに近所のスーパーから買ってきた菜種油3リットルを直で給油してみた。タンクには軽油が3〜4リットル残っていたから、燃料系統の軽油を使いきった後には植物油と軽油が半々の燃料になるってこと。軽油だけで稼働するときと違った点といえは1)エンジン燃焼温度が10Cくらい低かったことと、2)排ガスが道ばたのハンバーグ屋の臭いがしたことぐらい。それ以外は問題なし! この辺りもやっと暖かくなってきたし、これから植物油の割合を増やしたりして様子を見てみるつもりさ。 ニックより」

ニックさんの投稿に対する経験者からの親切なアドバイスはこれ。

「植物油をただ混ぜて使っていると、君の車はまずコールドスタートが悪化するだろう。それからフィルターが詰まり始める。じきにインジェクターが詰まって、燃料の噴射パターンが乱れてくる。やがてリングがくっついたり、シリンダー壁にグリースが付いたり、潤滑油の消費量が増えたりとあちこちに問題が出て、しまいにエンジンが止まるだろう。軽油に2割以上の植物油を混ぜるのは一時的な「実験」以外にはお勧めしない。残念ながら植物油を軽油に混ぜてみるってことは何も新しい事じゃない。烽オ軽油に高割合の植物油を混ぜて}続的に問題なく使えるのなら、僕たちはとっくの昔に実行している。気を付けてね。エドワード・ベグズ、ネオテリック・バイオフーエル社、カナダ<info@biofuels.ca>

これの亜流に、植物油に溶剤を加え粘度を下げて使うという人もいる。3%くらいのホワイトスピリット(ミネラル・テレビン油、ストッダード溶剤、テレビン油代用品などとも呼ばれる物)を加えるとのこと。この方法は英国のテレビ番組で「スプーン1杯加えるだけ」と紹介されたとき話題になった。でも疑問視する声もたくさん。「せいぜい実験的なもの」とは経験豊かな植物油ドライバーたち。5気筒間接燃焼ディーゼルエンジンを搭載した古いメルセデスくらいタフな車でないと止めた方がよいとの意見にまとまった(それくらいタフな車なら溶剤を加える必要もない)。私たちも同感。他にも植物油にブタノールやエタノールなどの溶剤を混ぜる話もあるけれど、まだ実用にはほど遠い。

2. 植物油そのままで使う

植物油そのままでエンジンを稼働するためには、まず軽油かバイオディーゼル燃料でエンジンを始動し、暖まったところで植物油に切り替えて走り、それからエンジンを止める直前にまた軽油かバイオディーゼル燃料に切り替える。そうしないと冷たく粘っこい植物油はエンジンやインジェクターを詰まらせてしまう。つまり植物油そのままで使うためには、燃料系統と燃料タンクを並列して2セット設置するという大改造が必要。しかもディーゼルエンジンの燃料系統に空気が入ると困るから、密閉型の燃料切り替え装置が必要になる。植物油はねばっこいため、冷たいままエンジンに流すと大変なことになる。

車の大改造が必要だけれど、それでも植物油そのままで車を稼働させることの意義は大きい。始めと終わりだけバイオディーゼル燃料を使い、走行中は植物油を使うことは、クリーンかつ効率的で、経済的な選択肢だ。

植物油そのままで使うSVOシステムについてはこちら

3. バイオディーゼル燃料

バイオディーゼル燃料が優れているのは、どんなディーゼル機械にもそのまま使えること。エンジンや燃料系統の乗せ替えや改造も不要で、今ある機械にそのまま給油して稼働することができる。バイオディーゼル燃料は植物油そのままで使うより寒さにも強い(軽油ほど凝固点は低くないけれど)。それにバイオディーゼル燃料は世界各国で数百万マイルを路上走行した数々の実績と長期にわたる試験に裏付けされている(植物油をまだテスト実績が足りない)

バイオディーゼル燃料はきれいで安全な、そのまま使える代替燃料。植物油(SVO system)はまだ実験段階で今後の発展が期待されるもの。

一方、バイオディーゼル燃料は植物油をそのまま使うよりコスト高になることもある。どうやって入手した植物油(未使用・廃油)と比較するかにもよるけれど。それから植物油をそのまま使うのと違い、バイオディーゼル燃料は「作り替える」作業が必要だから、これが手間だと思うかもしれない。だけど世界中で急増している手づくりバイオディーゼラーたちは多少の手間を苦にしていない。彼らは月1回、もしくは週1回燃料を作り、それが習慣として定着している。もう何年もそうやって燃料を自給してきた人も多い。

どちらにしても、植物油を「そのまま」使う場合でも油を精製する過程は必要。特に多くの人がやっているようにタダ同然の廃食用油(WVO)を燃料として使うためには、廃油を濾過して、脱水して、pH調整して使うべき。未使用の植物油もpH調整したほうが無難だろう。

バイオディーゼラーたちは「どうせ手間をかけるのなら、バイオディーゼル燃料を作ってしまった方が簡単」という。でも植物油そのまま派は燃料づくりの方が面倒とせせら笑う。それで車を大改造するのにお金をかけているけれど。

どちらにするかは、あなた次第。
x
精製過程
使用時の問題
エンジンの改造
燃料の価格
バイオディーゼル燃料
必要
なし
不要
場合によって安くできる
植物油(未使用・廃油)
多少必要
あり
必要
大抵安い

経費と価格:廃食用油から燃料を手作りしているバイオディーゼラーたちは、1ガロン(約3.78リットル)のバイオディーゼル燃料を作るためにかかる経費は60セントかそれ以下と言う。1週間に約10ガロン使うとして、年間600ガロンの燃料を作るための経費は約360米ドル。植物油をそのまま使うためのシステムを買ったり車を改造したりするためには300米ドルから1,200米ドル、下手したらそれ以上経費がかかる。だから植物油そのままで使う場合も1〜2年で元を取れる計算になるし、ディーゼル・エンジンにとっては短い期間でしかない。だけど植物油そのままでそれだけの年数稼働して問題ないか? それはまだ実証されていない。たぶん、良いシステムを導入すれば可能だろう。世界のSVOシステムに関する情報はこちら

バイオディーゼル燃料

いろんな議論を重ねた結果、油をバイオディーゼル燃料に作り替えて使う方法が一番だと、少なくとも私たちはそう考えている。

燃料を作るのが面倒な人は、サービスステーションで単に買うこともできる(日本ではまだ限られているけれど)。欧州自動車メーカーのほとんどが今ではバイオディーゼル燃料100%での使用を保証している。ただメーカーによってはどんなバイオディーゼル燃料か制限している所もあるけれど。保証適用燃料を「RME(rapeseed methyl ester - 菜種油から作ったメチルエステル)」に限り、米国製の大豆油から作ったバイオディーゼル燃料を保証から外している場合もある(欧州では菜種油、米国では大豆油が多い)。まあこれは品質管理というより貿易問題がらみの理由だと思うけれど。ドイツにはバイオディーゼル燃料を給油できるサービスステーションが1,500ヶ所以上あり、値段は軽油より安いほど。農業国フランスはバイオディーゼル燃料の最大生産国。フランスでは国内で販売されているほぼすべての軽油にバイオディーゼル燃料が2〜5%加えられている。新しいEU規制はこの軽油へのバイオディーゼル添加を欧州全体で義務づける予定だ。アメリカでもいくつかの州政府が似たような義務づけを進めている。アメリカのバイオディーゼル燃料供給者も急増中。アメリカではバイオディーゼル燃料の価格は軽油より高いけれど、バイオディーゼル燃料の売り上げは急激に伸びているため、価格もじき下がるだろう。英国ではバイオディーゼル燃料への課税は軽油より少なく、すでに市販されている。

手軽に購入するのもいいかもしれないけれど、エネルギー燃料を自分で作ることによる自立感、大企業に依存しなくても良い開放感もすばらしい! 感じるだけじゃない。手作り燃料はエネルギー的自立を実現可能にするのだから。

自家製の高級バイオディーゼル燃料を手作りするために、参考になる作り方がネットで紹介されている。ただインターネットでバイオディーゼル燃料の作り方を掲載している人たちが口酸っぱく繰り返すことは「安全対策は万全に! 燃料作りに使う化学薬品は、取扱いを誤ると火傷・怪我・失明・死亡につながるもの。もし事故が起きてしまったら、僕たちも悲しいけれど僕たちに責任はない。僕たちは何も推薦しない。あくまで自己責任のもと、充分な情報収集と学習をした上で燃料作りに挑戦すること」

バイオディーゼル燃料の作り方は難しくはないけれど、化学薬品を扱って化学反応を起こすのだから、基本的な化学の知識と万全の安全対策は必要。

だから私たちも

警告!!!

燃料作りの作業中は、化学実験に適した防護手袋、防護服、防護眼鏡を装着すること。作業場は充分に換気し、発生した蒸気は絶対吸い込まないこと。有機ガス用マスクを装着すること。メタノールは飲み込まなくても皮膚から吸収され盲目や死をもたらす恐れがあります。水酸化ナトリウムは重度の火傷や死をもたらす恐れがあります。この2つの物質を混ぜたナトリウムメトキサイドは非常に腐食性のある化学物質です。安全のためマスクを装着し、全身を保護した服装で臨むこと。半ズボンとかサンダルは絶対ダメ。長袖の上に止められる耐薬品手袋も忘れずに。万が一のときに薬品を洗い流すため、流水を近くに用意しておくこと。小さな子供やペットを作業場に入れないこと。化学物質は適切な取扱いをしてください

でもまあ、そんなに心配しなくても大丈夫。化学素人の私たちにだって作れるんだし、世界のあちこちでバイオディーゼル燃料を手づくりしている人は大勢いるのだから。基本的な化学知識と化学実験を行う上での注意と「自己責任」さえあれば大丈夫。

まずはインターネットに公開されている情報をみっちり調べて、納得できるまで勉強する。本格的な作業を始める前に、少量だけ実験的に作って練習してみる。それも廃食用油より、新しい植物油を使って燃料作りを練習した方がわかりやすい。

初めの第一歩 新しい油から練習する

初めの第一歩はここから。まずは卓上ミキサーを使って1リットルの植物油(未使用のもの)から練習用のバイオディーゼルを作ってみよう。もし予備のミキサーがなかったら中古で安いミキサーを買ってくるか、この方法を試してみて。

ほら、迷ってないで。実践あるのみ! 塗料店とかでメタノールを、薬局などで苛性ソーダを、それから近所のスーパーから一番安い植物油を買ってきて、燃料作りに挑戦!

作り方はここ。植物油は10リットルじゃなくて1リットルで、メタノールは2リットルじゃなくて200ml、苛性ソーダは3.5gで作ってみよう。ミキサーを使った作り方、一番危険なナトリウムメトキサイドを用意する部分は「ナトリウムメトキサイドの簡単な混ぜ方」も参照して。

次にすることは? ちょっと学習

学ぶこと。いくつか修得しなくちゃいけないことがある。難しいことではないし、化学者でも技術者でもない素人が数千人もバイオディーゼル燃料を手作りしているのだから、普通の人が理解できないことはない。ただ充分な学習は必要。燃料の手作りに必要な情報はぜんぶこのサイトに紹介している。詳しく説明してるから長くなるけど最後まで読んでみて。

まず、私たちはここから始めた。

化学反応のしくみ


台所のコンロでバイオディーゼル燃料を「料理」しているところ
植物油も動物脂肪も、脂肪酸が3個ずつグリセリン(グリセロール)に結びついた「トリグリセリド」という物質。7〜13%のグリセリンを含んでいる。バイオディーゼル燃料を作るプロセスでは、植物性・動物性油脂の脂肪酸をグリセリンとの結合から切り離し、別のエステルに変換する。切り離されたグリセリンは底に沈殿するので、上澄みのバイオディーゼル燃料をサイフォンで汲み出す。

この化学反応はエステル交換(transesterification)と呼ばれるもの。水酸化ナトリウム(苛性ソーダ)などを触媒とし、グリセリンを別のアルコールと置き換える化学反応。

グリセリンと置き換えるアルコールとしてメタノールを使うと「メチル・エステル」のバイオディーゼル燃料ができる。メタノールは木材などのバイオマス原料から作ることもできるけれど、市販のメタノールは大部分が化石燃料やガスなどから化学合成されたもの。

私たちはできればエタノールを使った「エチル・エステル」のバイオディーゼル燃料を作りたいと目指している。エタノールとは別名ウィスキー、ウォッカ、ジン・・・つまりお酒のこと。エタノールなら植物原料から作れるし、自分で蒸留することもできる。だけどエタノールを使ったバイオディーゼル燃料作りはもっと複雑になる(詳しくはエチル・エステルを参照)。

タノールは飲むこともできるけれど(飲むことが主目的?)、タノールは危険な毒物。失明し命を落とす。しかもわずかな量で短時間で命にかかわる。取り扱いには充分注意すること。

ランプなどに使うメタノール変性アルコールや消毒用のイソプロピル‐アルコールではバイオディーゼル燃料は作れない。

化学反応の触媒には、水酸化ナトリウム(NaOH 苛性ソーダ)、もしくは水酸化カリウム(KOH 苛性カリ)を使う。水酸化カリウムを使うと副産物としてカリウム肥料を作ることもできるけれど、苛性ソーダの方が入手しやすいし値段も安い。水酸化カリウムを使う場合、作り方は同じだけど使う量を1.4倍にすること(「灰汁(lye)について」参照)。

警告! 
苛性ソーダも苛性カリウムも強力なアルカリ物質! 触らない、目に入れない、蒸気も吸わない。食べ物や小さな子供たちの手の届かないところで扱うこと。アルミニウムやブリキ、亜鉛などと反応してしまうので、ガラスかステンレスの容器を使うこと(プラスチック容器の見分け方参照)

木の灰から灰汁を作る方法はこちら

「ジャーニー・トゥ・フォーエバー」のバイオディーゼル燃料

私たちが1999年に初めてバイオディーゼル燃料を作ってみたとき、それはまだ実験的な試みだった。原料の化学薬品やビーカー、シリンダーの他に初期投資したのは秤くらい。あとはその辺の道具で間に合わせ、家の台所でバイオディーゼル燃料を作ってみた。

まずは近所のマクドナルドを訪ね、ドロドロの廃食油を60リットルほどもらってきた。マックを選んだ理由は、衛生水準が高くすべてがマニュアル化されているマクドナルドなら、世界中どこでも同じように品質管理された廃食用油が入手できると思ったから。


マクドナルドからもらってきた廃食用油
一斗缶に4缶もらってきた油は、揚げ油にビーフやチキンの油が混ざった物。2缶の油はほとんど固体状態、残り2缶はドロドロの半液体だった。これを金属バケツに入れてコンロの火にかけ摂氏50度くらいに暖め、液状になったところで細かい金網で濾し、さらにコーヒー・フィルタの紙で濾過した。食べかすはほとんどなく、随分きれいな廃食用油が用意できた。

それから近所のスーパーで一番安い食用油を10リットル買ってきた。原産地も原料も表示していない怪しげな「クッキング・オイル」だったけれど、まあ食べるわけじゃないからこれで良しとした。

新しい植物油からバイオディーゼル燃料を作る

香港では純度の高いメタノールがなかなか見つからず、結局化学薬品の卸業者から5リットルを6,000円くらい払って買ってきた(日本では塗料店などを通じて16リットルの工業用メタノールが3,000円くらいで買える)。バイオディーゼル燃料作りに使うメタノールは純度99%もの(198 proof)が必要(「メタノールの量」参照)。

材料の割合は、植物油10リットルに対しメタノール2リットル、触媒として純粋な苛性ソーダの粉末を35グラム(油1リットルにつき3.5グラム。「灰汁(lye)について」参照)。

水酸化ナトリウム(苛性ソーダ)を買うときは、入れ物を振り、中身が湿気て固まっていないことを確認する。買った後もしっかり密封しておく。

苛性ソーダは空気に触れると、ものすごい勢いで吸水してしまう。バイオディーゼル燃料作りに水分は禁物! 化学反応のときに水分があると、エステル交換ではなく「ケン化」反応が起こり、燃料のかわりに石鹸がどっさりできてしまう。

苛性ソーダは密閉容器から出したら素早く必要な量を計り取り、素早くメタノールと混ぜてナトリウムメトキサイドにしてしまうこと。夏には気温30度、湿度80%になる香港で、これは至難の業だった。

私たちは2リットルのメタノールを丈夫な耐熱ガラス瓶に入れ、急いで計り取った35グラムの苛性ソーダを加え、中身が飛び散らないように充分注意しながら電動ドリルに取り付けた攪拌棒で10分間ほどかき混ぜた。(もっと手頃な「ナトリウムメトキサイドの簡単な混ぜ方」を開発したのは後のこと)。

メタノールと苛性ソーダは、発熱しながら合成し、ナトリウムメトキサイドになる。ナトリウムメトキサイドは強烈なアルカリ性物質。皮膚に触れると知らない間に深部まで腐食してしまうので、取扱いはくれぐれも要注意すること!!! 


台所で温度を調べながら油を暖めている緑
その間に、金属バケツに「クッキング・オイル」10リットルを入れてコンロにかけ、摂氏40度くらいに暖めた。ここで油を暖めるのは化学反応が起こりやすいように油をサラサラにするため(エステル交換には摂氏55度くらいが適温だということも後で発見)。メタノールは64.7度から蒸発し始めるため、あまり熱くしないこと。

コンロの上にキースが木ぎれで作った台を備え付け、もう一つの電動ドリルに付けたペンキかき混ぜ棒がバケツの真ん中に来るように万力で設置した。油を飛び散らかすこともなく、これはなかなか巧くできた。

電動ドリルのスイッチを入れ、かき混ぜられている油の中にナトリウムメトキサイドを静かに加える。化学反応がたちまち始まり、黄色がかったバイオディーゼル燃料が上の方に、茶色いグリセリンが下の方に分離し始めた! 温度を保ったまま1時間ほど攪拌し、化学反応を完了。その後バケツを静かなところに一晩置いて、グリセリンを底に沈殿させた。

翌日、上の層に分離したバイオディーゼル燃料10リットルほどをサイフォンで吸い出した。バケツには2リットルくらいのグリセリンなどが残っている。ひとまず、バイオディーゼル燃料のできあがり!

廃食用油からバイオディーゼル燃料を作る

未使用のバージンオイルを使うより、廃食用油からバイオディーゼル燃料を作る方がずっと魅力的。そのまま捨てると環境を汚染する廃食用油を有効活用できるし、原料コストも安くなる(上手くいけば)。だけど廃食用油からバイオディーゼル燃料を作るのは新しい油よりちょっと複雑。

まずは廃食用油から水分を取り除く。調理に使われた油にはいくらかの水分が含まれている。燃料づくりの化学反応のときに水分が存在していると、エステル交換ではなくケン化が起こり、バケツいっぱいのドロドロ石鹸ができてしまう(失敗もしました、私たち)。水分の除き方はこちらも参照して。

油から水分を蒸発させるにはかなりのエネルギーを使ってしまうし、熱を加えると燃料づくりにはやっかいな遊離脂肪酸(FFA)を増やしてしまう。そこでアレックスが考案した方法がこれ。原料の廃食用油を摂氏60度に暖め、15分間その温度を保つ。これをタンクに入れ少なくとも24時間静かな所において油と水を分離させる。分離に使うタンクは9割以上空にしないこと。

もう一つ、廃食用油からの燃料作りに追加される作業。

廃食用油からバイオディーゼル燃料を作るときには、未使用の植物油から作るときより多くの触媒が必要になる。油を料理したときに形成される遊離脂肪酸(FFA)はエステル交換をじゃまするため、これを中和させるよう触媒(アルカリ性)の量を増やさなくてはいけない。しかも油の使われ方や使われた期間によって、必要な触媒の量はそのつど違ってくる。

そのため原料の廃食用油を「滴定」し、その油が含む遊離脂肪酸に見合う触媒の量を算出する。つまり油のpHを定める。正確な滴定結果を得るためには、デジタルpHメーターなど厳密なpHが測定できる装置を使った方がベターだけれど、そんな高価な物を持っていない私たちは、まずは原始的なリトマス紙で挑戦! でも正確なpHが測れず、失敗してしまった(バケツいっぱいの石鹸・・・)

赤キャベツの汁でpHを測定しようかとも考えた(自然のリトマス紙についてはこちら)けど、インターネットで調べ直して、今度はフェノールフタレン液を使って挑戦。pH指示薬のフェノールフタレン液は、pH 8.3で無色透明からピンク色に変わり始め、pH10.4で赤に変わる。


キース、滴定しているところ
1リットルの蒸留水に1グラムの苛性ソーダを溶かし、0.1%の水酸化ナトリウム溶液を作る。

別の容器に、イソプロピルアルコール10ミリリットルを入れ、原料の廃食用油1ミリリットルを溶かす。容器ごと湯煎してゆっくり暖め、油が完全に溶けてアルコールが透明になるまでかき混ぜる。フェノールフタレン液を2滴加える。

この「廃食用油+イソプロピルアルコール+フェノールフタレン液」の溶液の中に0.1%の水酸化ナトリウム水溶液を注射器などで一滴ずつ数えながら滴下する。一滴滴下するたびに、全体をしっかり攪拌する。液体がピンク色に変わり、10秒たってもピンク色が消えなくなったところで止める。

計算の仕方は:
滴下した水滴の量(ml)+3.5=触媒として必要な苛性ソーダのグラム数
(もっとよい滴定の方法はこちら)

私たちの最初の滴定は6mlだった。だから
6ml + 3.5 = 9.6g
1リットルの廃食用油に必要な苛性ソーダは9.6グラム。つまり10リットルには96グラムの苛性ソーダが必要ということ。

あとは新しい植物油からバイオディーゼル燃料を作るときと同じ。苛性ソーダを素早く計り、メタノールと混ぜてナトリウムメトキサイドを作る。苛性ソーダの量が増えた分だけ、ナトリウムメトキサイドの発熱量も危険度も大きくなるから気を付けて! 苛性ソーダがぜんぶ完全に溶けたことを確認すること。

予熱した油に、ナトリウムメトキサイドを静かに流し込み、1時間ほど攪拌する。一晩静かな所に置き、上澄みのバイオディーゼル燃料を吸い出す。

私たちが練習で廃食用油からバイオディーゼル燃料を5回作ったとき、3回は焦げ茶色のバイオディーゼル燃料を作り出すことに成功! あとの2回はバケツいっぱいのドロドロ石鹸ができてしまった。

成功へのポイントは、
1)水分をとにかく取り除くこと
2)正確な滴定結果を出すこと。滴定を2回繰り返し、正確な値を出す。

廃食用油10リットルからできるバイオディーゼル燃料は8〜9リットルと、製造比率は少し少な目になる(作り方にもよるけれど)。

できた燃料を洗う

バイオディーゼル燃料を作って市販するつもりなら、できた燃料を洗浄・乾燥してグリセリンや石鹸分、その他の不純物を取り除く必要がある。でも自分で使うだけなら、手間をかけて燃料を洗うか洗わないかは本人次第。「絶対洗うべき」というバイオディーゼラーもいれば、「燃料にちょっとくらい不純物が混ざってたって、エンジンを傷めはしないさ」という人もいる。

私たちはバイオディーゼル燃料は洗浄して乾燥してから使うことをお勧めする。バイオディーゼル燃料に水を加え、かき混ぜ、数時間静なところに置いて燃料と水を分離させ、水を流し出して燃料のpHを調べる。燃料のpHが7(中性)になるまでこれを数回繰り返す。

洗ったあとにバイオディーゼル燃料が曇っていたら、今度は水が含まれている証拠。燃料を加熱して水分を蒸発させる。

簡単で効果的なアイダホ大学開発の「泡洗浄」など、バイオディーゼル燃料の精製についてマイク・ペリーのレセピ で紹介している。

もっと詳しくはこちら 最後の仕上げは泡で洗う

手づくりバイオディーゼル燃料で車を走らせる!

バイオディーゼル燃料は車を改造することなく使うことができる。それがバイオディーゼル燃料の大きなメリット。ただ快適なバイオ運転のために、チェックするべきポイントはいくつかある。

まずインジェクション・タイミングを2〜3度遅らせること。バイオディーゼル燃料は軽油よりセタン価が高いため。これで燃焼温度も低くなり、NOxの排出も抑制される。

バイオディーゼル燃料は優秀クリーナーなので、軽油が燃料系統の節々にため込んだ燃料カスを、ごっそり洗い流してくれる。車にとって嬉しいニュースだけど、そのままにしておくと燃料カスがインジェクターなどを詰まらせてしまうので、バイオディーゼル燃料を使い始めた時は燃料フィルタをこまめに取り替えることを忘れないように。

燃料系統にゴム部品が使われている場合は、取り替える。Vitonが最適。最近の車両には少ないと思うけど。詳しくは「プラスチックの耐久性」を参照。

いろんな注意事項が述べられているわりには、トラブった話はあまり聞かない。注意が必要なのも最初だけ。でも用心するにこしたことはないから、あくまで自己責任で判断してください。

詳しくはバイオディーゼル燃料を使うときの確認事項を参照。


さらに詳しい、作り方のコツはこちら。


手づくり企画の「バイオ燃料メーリングリスト(biofueljp)」

英語で2000年から開設されていたジャーニー・トゥ・フォーエバーの「バイオ燃料メーリングリスト」および「バイオ燃料ビジネスメーリングリスト」では、世界中から参加した3,000人以上の草の根バイオディーゼラーや専門家、学識者、企業家たちが、誰もがどこでも特別な機械がなくてもバイオ燃料を手づくりできる方法を一緒に開発してきました。日本でも草の根バイオ燃料を広めるために、日本語で情報交換や燃料づくりの協力ができるディスカッションの場を設置しました。ぜひご参加ください。
リストURL:http://groups.yahoo.co.jp/group/biofueljp/

biofueljpグループに参加する
Powered bygroups.yahoo.co.jp

バイオ燃料

バイオディーゼル燃料

自分で作ってみよう! 
バイオディーゼル燃料の作り方

マイクの「1段階 アルカリ方式」
アレックスの「2段階 アルカリ-アルカリ方式」
アレックスの「2段階 酸-アルカリ『Foolproof』方式

燃料製造器も自分で作る! 作り方

香港バイオディーゼル物語
排ガス中のNOxは問題か?
副産物グリセリンの活用法
バイオディーゼル情報集
ディーゼルに将来はあるか?
作物による植物油の収量と特徴
最後の仕上げは泡で洗う
バイオディーゼル燃料を使うときの確認事項
食糧vs燃料?
植物油そのまま燃料

ガソリン車にはエタノール燃料を
エタノール情報集
エタノール燃料はエネルギーを無駄にしているか?

バイオ燃料ML
バイオ燃料のオンライン図書館(英文)
バイオ燃料と燃料作り用具の入手先(英文)


地域の自立 | Rural development
都市農園 | 有機菜園のススメ | 土をつくる | 小さな農場 | バイオ燃料 | 太陽熱コンロ
森と土と水と | 世界の種子 | Appropriate technology | Project vehicles

日本語トップ | ホームページ(英語) | メディア掲載とコメント集 | 手づくり企画の紹介
プロジェクト | インターネット | 教育企画 | サイトマップ | メールを出す

教育・啓蒙を目的とし(商業活動を除く)、出典事項を明記した部分的コピーやリンクはご自由にどうぞ。ただし第三者による情報の独占を防ぐため、別途明記されていない限りこのサイト上のオリジナル素材の著作権は下の著者が所有します。サイト上の情報は各個人の自己責任のもと活用して下さい。
(c) Keith Addison and Midori Hiraga
手づくり企画「ジャーニー・トゥ・フォーエバー」<http://journeytoforever.org/jp/>

ジャーニー・トゥ・フォーエバーを応援してください!
今後ともプロジェクトを進めていくためにご支援いただけましたら幸いです。ありがとうございました。