バイオディーゼル燃料を使うときの確認事項: 手づくり企画「ジャーニー・トゥ・フォーエバー」


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●次回の「手づくりバイオディーゼル燃料セミナー」を11月30日(日曜日)に予定しています。参加者募集中! 詳しくはこちら。

●日本各地の取り組みをまとめた「バイオディーゼル日本地図」をアップしました。

バイオ燃料

バイオディーゼル燃料

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マイクの「1段階 アルカリ方式」
アレックスの「2段階 アルカリ-アルカリ方式」
アレックスの「2段階 酸-アルカリ『Foolproof』方式

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排ガス中のNOxは問題か?
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連絡先
手づくり企画「ジャーニー・トゥ・フォーエバー」
http://journeytoforever.org/jp/
〒622-0291京都府船井郡
丹波町郵便局 私書箱6号
キース・アディソン (英語)
平賀緑 (日本語&英語)
midori@journeytoforever.org

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バイオディーゼル燃料を使うときの確認事項

よく聞かれる質問「僕の愛車にバイオディーゼル燃料を使ってホントに大丈夫?」

答え「ディーゼル機関なら何でもOK。だけど次のポイントは確認して」

燃料フィルタをチェック

まず、化石燃料の軽油は排ガスが汚いだけでなく、燃料そのものも汚いため、軽油を使っていた燃料系統にはあちこちに燃料カスがたまっている。バイオディーゼルは燃料として排ガスも燃料自体もきれいであるだけでなく、他の汚れも掃除してしまう強力クリーナー。そのため初めて軽油からバイオディーゼル燃料に切り替えたとき、バイオディーゼルがタンクからエンジンまで燃料系統の中を大掃除してくれるため、洗い流された燃料カスがインジェクターを詰まらせる恐れがある。だからバイオディーゼル燃料を使い始めたとき、特に最初の2週間くらいは、燃料フィルタから目を離さないでフィルタ・エレメントが汚れたらすばやく取り替えることが大切。予備の燃料フィルタ・エレメントを確保してからバイオ運転を始めよう。

インジェクション・タイミングを調整

次に、インジェクション・タイミングを2〜3度遅らせること。バイオディーゼル燃料はセタン価が高いため、インジェクション・タイミングを調整することで相殺する。せっかくバイオディーゼル燃料が強化したパワーをちょっと押さえることになるけれど、エンジン音も静かになり、燃焼温度も低めになるため窒素酸化物(NOx)の排出も押さえることができる(「 排ガス中のNOxは問題か?」参照)。

ゴム部品をチェック

それから燃料系統にゴム部品が使われている場合、バイオディーゼル燃料(特に純度の高いもの)を長期間使っているとゴムを腐蝕することがある。最近の車は燃料系統にやわなゴム部品は使われていないからまず大丈夫だろうし、古い車でも長年問題なくバイオディーゼル燃料が使われているけれど、心配だったら各メーカーに確認して。耐化学薬品性の高いバイトン(Viton)フッ素ゴムに替えられたらベスト。バイオ燃料オンライン図書館の「各種プラスチックの耐久性:アルコール対ガソリン」のメタノール欄もチェック!


ゴム部品の腐蝕についてオーストリアでバイオディーゼル燃料を商業的に製造・市販しているBiodiesel Raffinerie社(http://www.energea.at/en_info.html) のカメロ・ホロチェック氏は次のようにアドバイスしている。

「バイオディーゼル燃料の商業的な製造・販売業者として私が顧客に説明していることは『欧州の自動車メーカーが1996年以降に製造した車は100%バイオディーゼル燃料に対応している。すでにフランスではガソリンスタンドで市販されている標準の軽油にバイオディーゼル燃料が5%加えられているし、チェコではBio-Naphtaとよばれるバイオディーゼル30%の燃料が広く一般顧客に市販されている。そのため欧州の自動車メーカーはこれほど重要なマーケットで問題を起こして自社ブランドを傷つけたいとは思わない』

「日産オーストリアも最近『Primera』が100%バイオディーゼル燃料に対応していることを認めたよ。

「今まで話を聞いたのは、古いトラックでバイオディーゼル燃料を何ヶ月も使っていたら、製造時から使われているインジェクション・ポンプのシールが膨れ上がり、破裂したことが2〜3件あったくらいだ」


イギリスで「持続可能な運輸機関のためのバイオ燃料活動(http://www.biofuels.fsnet.co.uk/) 」をしているテリー・ド・ウインはこうコメントしている。

「超低硫黄軽油(ULSD)は硫黄を減らしただけ、硫黄分による燃料の潤滑性とゴム部品への加硫処理能力に欠けている。欧州諸国が1993/95規制で超低硫黄軽油を導入したとき、自動車メーカーはゴム部品をバイトン(Viton)フッ素ゴムなどの製品に取り替えた。

「導入初めのころ超低硫黄軽油はインジェクターを痛めたり問題多発だった。そこで燃料会社が超低硫黄軽油に潤滑性を高める添加物を加え始めた。

「農業国であるフランスは、バイオディーゼルでこの問題を克服した。フランスの大手燃料会社3社がすべての超低硫黄軽油にバイオディーゼルを5%加えた。シェル・インターナショナルは2%しか加えなかったけれど、これほど少量でも硫黄分の欠如を補完するには充分。バイオディーゼルは酸素添加剤としても機能するため、排ガス物質(特に一酸化炭素や窒素酸化物など)の排出も減らしてくれる。

「つまり、メーカーが気がついていようがいまいが、 ヨーロッパ製の車はそのままバイオディーゼル燃料を使用してまず大丈夫だということ。

「バイオディーゼル燃料は有機物質であるため、長い間使われていると天然ゴムに吸収される傾向があり、そのためゴムのホースやシールが膨れて破裂する恐れがある。これは軽油に加えられたバイオディーゼル燃料の割合に関係なく起こる。でも1回か2回バイオディーゼル燃料を試すだけなら、その後軽油や超低硫黄軽油に戻るのなら問題ない。

「車よりディーゼル発電機にバイオディーゼル燃料を使うときに注意した方がよい。発電機は硫黄分が高い軽油で稼働することを想定しているから、ホースなどにゴム部品が使われていることが多いからだ」


米国・カリフォルニア州のバークレー・エコロジー・センターのマリア・アロバート (Girl Mark) は手づくりバイオディーゼラーのベテランとしてバイオ燃料を積極的に推進しているが、彼女いわく、ゴム部品の問題は実際は騒がれているほど深刻ではないと言っている。

「商業的な製造業者としてバイオディーゼル燃料を市販する場合や企業としては、販売する製品に関して可能な限り保守的な情報を伝える責任がある。製造物責任もあるため、消費者に最大限の警告を伝えておかないと訴えられる恐れもある。

「でも実際のところは、アメリカで出回っている1980年代以降の車でホースやシールの問題はほとんど起きていない。多少燃料漏れが起きた場合でもかなりの時間がたってからで、しかも致命的な大問題には至っていない。バイオディーゼル燃料100%で数千マイルも長距離走った後で燃料が漏れたり、1980年代半ばに製造されたフォルクスワーゲン車の燃料リターン・パイプから燃料が漏れたりという話をたまに聞くくらいだ。私は過去数年間、何人もの手づくりバイオディーゼラーたちに会ってきたけれど、実際に燃料漏れを見たのはこのフォルクスワーゲン車のリターン・パイプだけだ。だからといって1980年代製フォルクスワーゲン車でバイオディーゼル燃料100%を使うのを止める気はないけど。もし燃料が漏れたら、修理するのは簡単。燃料漏れが起こるのは外側の燃料パイプとかで、インジェクター・ポンプ内部ではまず起こっていないから。

「企業の製造責任に加えて『バイオディーゼル燃料の割合が多いB50以上を使ったときに燃料漏れを起こす』と強調されているのは、全米バイオディーゼル協会(US National Biodiesel Board: NBB)がそういう情報を流しているからだ。なぜかというとNBBはバイオディーゼルを軽油の増量剤として見ているから。NBBは口では純粋バイオディーゼル燃料の『B100』を推奨しているけど、現実にはB20を広める努力をしている。それに業界団体として企業以上に消費者に対して保守的な警告を伝えなくちゃいけない立場にある。それにバイオディーゼル燃料の大手を中心とする業界団体だから、手づくりバイオディーゼラーや植物油そのまま(SVO)派への信用を落とそうと低く低く評価している。NBBは必ずしも正しい情報だけを提供しているわけではない。

「B100が腐蝕するゴムも種類によってあるのは事実。腐蝕の程度はさまざまだけど。例えばニトリルゴムはB100で腐蝕される。とはいうものの、私はニトリルゴム部品を含む用具を毎日バイオディーゼル作りに使っているけど、今のところ腐蝕したことがない。燃料づくりに使うポンプのニトリルゴム部品は毎日24時間バイオディーゼル燃料に浸っているし、ニトリルゴムでできた園芸用ホースのワッシャーを燃料づくりのホース・ワッシャーに使っている。手袋にもガスケットにもニトリルゴムを使っている。理論的にはバイオディーゼルがニトリルゴムを膨張させ弱めるはずだけど、長年のバイオディーゼル作りの中でそんなことは経験したことがなかった。

「車の燃料系統の中では熱が加わるために状況が違うかもしれない。だけど化石燃料でも似たようなものだと思う。軽油もかなり刺激性のある物質でゴムの種類によっては軽油も腐蝕する。そのため燃料系統の『ゴム』部品は腐蝕に対してかなり頑丈な材質がもともと使われている。もし燃料漏れが起きたとしても徐々に漏れ始めるだろうし、致命傷にはならないだろう。もちろん絶対大丈夫とは言えないけれど『バイオディーゼル燃料を使うためには即自動的に燃料系統のゴム製品をすべてバイトン製部品に取り替えること』というアドバイスは及び腰過ぎだと思う」

手づくりバイオディーゼル燃料の品質

原料の油や作り方により、できたバイオディーゼル燃料の特性には多少違いがある( 油およびエステルの特性参照)。油脂の凝固温度の違いにより寒さに強い燃料になったり、メタノールを使ったメチル・エステルとエタノールを使ったエチル・エステルでは結果が少し違ったりする。多少性格が違っても、バイオディーゼルはすべてすぐれた燃料。たとえ原料がどんなに汚い廃食用油でも、きちんとした手法できちんと作れば高品質燃料になる。下のレセピ通りに作れば(横着しなければ)、だれでも高品質のバイオディーゼル燃料を自分で作ることができるはず!

バハマ・エリューセラ岬にあるアイランド高校の職員ジャック・ケンワージーは2002年11月にまったくの初心者として「ジャーニー・トゥ・フォーエバー」のバイオ燃料メーリングリストに参加した。リスト参加者はジャックがバイオディーゼル燃料の作り方を基礎の基礎から学ぶのを手助けし、ジャックがバハマで直面した問題を一緒に解決し、アイランド高校向けのプロセッサもみんなでデザインしてあげた。バイオ燃料メーリングリストに参加して9ヶ月後にジャックは次のメッセージを投稿している。

「やあ、みんな! 僕が作ったバイオディーゼルがASTMテスト(米国ASTM D-6751ディーゼル基準)に合格したよ! しかも全カテゴリー合格だった。バハマみたいな辺境でも僕みたいな素人でも、超一流の燃料を手づくりできることの証明がまた一つ増えた。みんな本当にありがとう。ジャックより」

ジャックは島に週一回立ち寄るクルーズ船の食堂から廃食用油をもらい、「1段階 アルカリ方式」で1回150ガロン(約560リットル)、週に300ガロン(約1,135リットル)のバイオディーゼル燃料を手づくりしている。

スロベニアのアレックス・カックは、自分で開発した「2段階 酸-アルカリ『Foolproof』方式」で自家製バイオディーゼル燃料を作り、欧州における品質基準として定評あるドイツのDIN 51606試験に2回合格し、オーストリアのONORM試験にも合格した。試験用に何も準備しないで、アレックスが自分の車のために作っているいつも通りの燃料にもかかわらず。

イギリスにいるベテラン・バイオディーゼラーのマーティン・スティールは、1989年製ボルボ940 (VW 2.5 IDI エンジン)での体験談を話してくれた。第2インジェクターの調子が悪かったため、マーティンは車を整備工場に持ち込んだ。原因はインジェクター本体とシリンダーヘッドの問題で燃料は関係なかったけど、これを機にマーティンは自家製バイオディーゼル燃料で30,000マイル(約48,280km)走行した彼の愛車を徹底的に検査してもらった。

「手づくりバイオディーゼル燃料による影響がどんなものか、不安と期待いっぱいだったけど、エンジンをこじ開けてみた結果は僕の期待以上だった。1-3-4-5-6のインジェクターはこの車を買ったときに掃除したし、15,000マイル前に取り替えた。ただ第2インジェクターだけが買ったときからくっついたままで取れなかったんだ。今日、やっとのことでシリンダーヘッドを開いたら、中の状態は最高だった。エンジンの中は汚れ一つなく、シリンダーヘッドもカーボン・フリーだった。

「吸入口・排気口もきれいで、バルブも焼け付いたり穴が空いたりしていなかった。インジェクターも@155 BARでテストしたら鳥の鳴き声のような良い音をしてバッチリ。腐蝕も錆もなく、普通だったらカーボンがたまって埋もれているインジェクター・オイルの先端もきれいに見える状態だった。

「結論として、燃料系統は最高のコンディッションだった。燃料や不完全燃焼が原因の損傷は全くゼロ。

「きちんと作った自家製メチル・エステルが軽油や市販されているバイオディーゼル燃料に勝るとも劣らない燃料だってことのハッキリした証拠をこの目で見ることができたよ」

マーティンの車を点検した整備工員は、この年代のエンジンがこれほどきれいな状態を見たことがないと驚いていたそうだ。


2002年11月7日、米国でもバイオディーゼル燃料大手のワールド・エネルギー社のグラハム・ノイズがバイオ燃料ビジネスメーリングリストにこんなメッセージを投稿した。

「バイオディーゼル業界は、燃料を手づくりする人たちがせっかくのバイオディーゼル市場を潰してしまうのではないかと非常に恐れている。私も自家製バイオディーゼルによるトラブルをあちこちで見てきたし、そのダメージを信頼回復するために大変な労力を要した。とくに米国のある地域では、規格はずれの自家製燃料が大量に売られ配布されている。この地域においてはバイオディーゼル燃料に対する信頼を回復するまでなかなか利用が広められず、普及が遅れてしまった。」

でもリスト参加者から詳細を示すよう要求されたのに、グラハムは「自家製バイオディーゼル燃料が起こしたトラブル」の実例を一つも提示することができなかった。すべてがあいまい。3週間後、グラハムは論調を変えた。

「このリスト参加者の経験を学ぶにつれ、手づくり派の人たちが最高品質のバイオディーゼル燃料を作るために非常な努力をしていることが理解できた。自家製燃料に対する懸念を主張する前に、もっと注意深く詳細を調べるべきだった。私は業界の一員としてバイオディーゼルに週40-70時間関わっているが、いまだかつて自家製バイオディーゼル燃料によって大きなトラブルが引き起こされた実例を見たことがない。手づくり燃料に対して懸念する声はあるが、あくまでそう思われているだけでトラブルの実例があるわけではない。

レストランの方が家庭料理より美味しい料理を作るとか、工場で作られた既製品の方が手づくりの作品より質が良いとの思いこみは強い。グラハムの発言も、企業が大がかりな機械で製造するバイオディーゼル燃料の方が「とうぜん」手づくりされた自家製バイオディーゼル燃料より高品質だという根拠のない業界での思いこみだった。思いこみというより、企業の利益のためにそう宣伝したい「スピン(歪められた宣伝情報)」と言えるだろう。少なくともグラハムは証拠もないのに自家製バイオディーゼルを過小評価したことを認めたため、手づくりバイオディーゼラーたちからも見直されたけど。グラハムは今では手づくり燃料に対する否定的な噂を正す努力に忙しい。

この話には落ちがある。グラハムが手づくりバイオディーゼル燃料より企業が製造した市販燃料の方が高品質で安心と投稿した数ヶ月後の2003年5月、ワールド・エネルギー社は米国太平洋岸北西地区から大量の市販バイオディーゼル燃料をリコールした。市販燃料が品質基準に達しておらず、グリセリン含量も多かったためだ(つまりきちんと洗浄されていないこと)。信頼を損なわないようワールド・エネルギー社は大急ぎでバイオディーゼル燃料を回収し、品質基準に適合した燃料と取り替え、企業ダメージを回復するための広報活動を広げた。でもその後すぐ、今度は別の会社からサンフランシスコに流通した市販バイオディーゼル燃料が品質基準に達していない悪質な燃料だと発覚して、数千ガロンもリコールされた。幸い消費者の手に届く前に間に合ったけれど。


バークレー地域で手づくりバイオディーゼル燃料の作り方を指導し普及しているベテラン・バイオディーゼラーのマリア・アロバート (Girl Mark) は市販されているバイオディーゼル燃料の品質についてバイオ燃料メーリングリストに次の投稿をしている。

「またまた設備とお金を持った企業だけが高品質燃料を提供できて、手づくり派はまともなバイオディーゼル燃料を作ることができないとの言い掛かり。

「だけど皮肉なことに、私たちが月曜日に開催する『バイオディーゼル燃料の品質管理・品質チェック』のトレーニング・クラスでは、比較したサンプルの内『劣悪な品質』に選ばれるのは市販のバイオディーゼルだ。

「このクラスでは機械で製造された市販のバイオディーゼル、酸・アルカリ方式で手づくりしたバイオディーゼル、それからいくつかの自家製バイオディーゼルのサンプルの品質をチェックして比べている。

「はじめは市販のバイオディーゼルと酸・アルカリ方式で手づくりしたバイオディーゼルを品質基準を満たしたサンプルとして使っていたけれど、最近では手づくり派が市販のバイオディーゼル燃料をテストして、その燃料をそのまま使って安全か、再加工か洗浄が必要じゃないかチェックしているのって、おもしろい構図だと思う。これだけ『手づくり燃料は粗悪だ』って宣伝された後は特にね。

なぜ品質が重要か

どの世界にも横着したがる人はいる。バイオ燃料メーリングリストにも「材料を入れたペットボトルを数回シャカシャカ振るだけでバイオディーゼルはできる! この燃料で数10キロ走行したけど何の問題もない」と主張している人もいる。

ガソリン・エンジンと違って、ディーゼル・エンジンはもともと雑な燃料でも「しばらくは」稼働できるようタフに作られている。ディーゼル・エンジンは灯油やガソリンが混じった燃料や使用済みのモーター・オイルでも稼働しないことはない。手抜きで作られた未完成のバイオディーゼルやきちんと洗浄されていない不純物たっぷりのバイオディーゼルでも動かないことはない。だけどディーゼル・エンジンやその燃料系統は少なくとも40万〜50万キロ走るもの。だから数10キロ走ったぐらいでは「大丈夫」と言えない。粗悪なバイオディーゼル、つまり石鹸分や余分なメタノール、苛性ソーダの残留、遊離脂肪酸などなどが含まれた燃料で長距離(最低40万キロ)走行したときの安全性はまだ実証されていない。もっとも各国の基準委員会や専門研究所はすでにこれらの不純物を有害とみなし、それなりのバイオディーゼル燃料の国定基準を定めているから、このような実証テストはもう行われないだろう。

バイオディーゼル燃料の品質についてインジェクション機器の製造会社が共同で注意を呼びかけている。愛車のトラブルを防ぐためには、指示どおりにきちんと作り、きちんと洗うことが大切。手抜きをするとツケが回ってくる。

バイオディーゼル品質チェックの方法

自分で作ったバイオディーゼル燃料を自分で品質チェックする方法をアレックス・カックが紹介している。

「ディーゼル機関を問題なく稼働するには、ある程度高品質の燃料が必要。いいかげんに作ったバイオディーゼル燃料を使ってエンジンがいつまでも調子よく稼働してくれると期待するのはマチガイ。給油する前に特にバイオディーゼル燃料から取り除かなければならないのは遊離グリセリンとエステル変換し損なった油脂、それから苛性ソーダの三つ。グリセリンやエステル変換し損なった油脂分(モノグリセライド、ジグリセライド、トリグリセライド)はインジェクターの先端やバルブの周りにガム状のカスを溜めてしまう。苛性ソーダの残留はインジェクター・ポンプを損傷する恐れがある。愛車を大切に思うなら、このサイトに書かれている注意事項をきちんと守り、手順に沿って丁寧に燃料を作ること。硫酸、苛性ソーダ、メタノールなどの化学薬品は純粋な物を使いA必要量を正確に計り取ること。高アれで燃料への変換をきちんとすることができる。った燃料は充分洗って残留しているグリセリンと苛性ソーダをしっかり取り除くこと。

「燃料の品質チェックのためのツールもある。ジャーニー・トゥ・フォーエバーに掲載された僕のページを見た人がメールをくれて、自動車業界にはオイル中のグリコールを測定するキットがあることを教えてくれた。これで燃料中の遊離グリセリンを測る目安にはなると思う。

「バイオディーゼル燃料のグリセリン残留を調べるためには、オイル中のエチレン・グリコールを測定するキットがお勧め。このキットはグリコールでもグリセリンでも同じ結果を示すから、テストした燃料にグリセリンが多く残っていると紫色になってすぐわかる。中古車のディーラーたちはこのキットを使って、冷却システムに漏れがないかをチェックしている(情報提供してくれたマーティン・レニーに感謝!)。

ペーパー・クロマトグラフィーや薄層クロマトグラフィーなどを使えばエステル交換された比率が調べられるし、滴定すれば苛性ソーダの残留について調べられる。

「テスト用品がなくても、見た目でかなり正確な品質チェックをすることも可能。できた燃料が明るい黄色であればあるほど、エステル交換が上手くいったということ。新しいヒマワリ油を日光に透かしたときの黄色を基準として、作った燃料の色を比べてみる。それから燃料をグラスに入れ、夜白い壁の前でタングステン電球を照らしたときにオレンジ色に変わらないことを確かめる(ごく簡単な吸収分光計の例)。

  • 上手にエステル交換されたバイオディーゼル燃料: 新しいヒマワリ油より薄い黄色で、電球で照らしたときも色が変わらない物
  • 使用可能なレベルのバイオディーゼル燃料: 新しいヒマワリ油と同じくらいの黄色で、電球で照らしたときに少しオレンジがかった色になる物
  • これより色が濃いバイオディーゼルにはいろんな形態のグリセリンが含まれているため、エンジンには使わない方がよい。触媒の量を間違えていないのに濃い色のバイオディーゼルができたときには、メタノールを少し多めに加えてみる。メタノールが蒸発して足りなくなったのかもしれないから。

米国・Appal Energy社のトッド・スウェージェンが他にも便利なDIY品質チェックの方法を教えてくれた。「燃料の裏庭テストとして、できあがった燃料1リットルから、新しい油をバイオディーゼル燃料にする方法でもう一度化学反応させてみる。それでグリセリンが沈殿するようだったら、改善の余地があるということ。

「それから洗浄に使った水をチェックする。2回目の洗浄水はほぼ透明、3回目の洗浄水はクリスタルに透明であるべき。

「3回目の洗浄を終えて24時間静置しておいた燃料は、ガラスの瓶に入れて光にかざしたとき透き通っていること。もし燃料が曇っていたら、摂氏32度まで暖めたら透明になるはず。

「この最小限の加熱で曇りがとれるようだったら、その燃料は車に給油してドライブに出ても大丈夫。

「これらの『テスト』に合格だったら、たぶん企業が連続方式で製造したバイオディーゼル燃料より優れた燃料を手作りできたって思っていい」

米国農務省の農業調査サービス(USDA Agricultural Research Service)はバイオディーゼル燃料の品質を調べるために、近赤外線分光器(NIR)という装置を応用している。ガス・クロマトグラフィーも標準的に使われるけど、これはかなりの技術・時間・薬品が必要な手法。それに対してNIRは植物油の脂肪酸の構成を調べたり種子に含まれる油を調べたりする事もできる便利な測定器。NIRは薬品ではなく光で分析し、植物油からバイオディーゼルへの変換を1分間で調べることができる。

バイオディーゼル燃料の品質基準

Oils and esters and characteristics
Iodine Values
Quality standard for rapeseed oil fuel
Cetane Numbers
National standards for biodiesel
Fuel properties of fats and oils
Fuel properties of esters

CEN Diesel Fuel Specification (EN 590:1993):
http://journeytoforever.org/energiaweb/en590en.htm

米国の基準 -- D6751-02 Standard Specification for Biodiesel Fuel (B100) Blend Stock for Distillate Fuels. ASTMのウェッブサイトから30米ドルでpdf文書をダウンロードできる。
http://www.astm.org/cgi-bin/SoftCart.exe/STORE/
filtrexx40.cgi?U+mystore+mofc8213+-L+D6751+/usr6/
htdocs/astm.org/DATABASE.CART/PAGES/D6751.htm


手づくり企画の「バイオ燃料メーリングリスト(biofueljp)」

英語で2000年から開設されていたジャーニー・トゥ・フォーエバーの「バイオ燃料メーリングリスト」および「バイオ燃料ビジネスメーリングリスト」では、世界中から参加した3,000人以上の草の根バイオディーゼラーや専門家、学識者、企業家たちが、誰もがどこでも特別な機械がなくてもバイオ燃料を手づくりできる方法を一緒に開発してきました。日本でも草の根バイオ燃料を広めるために、日本語で情報交換や燃料づくりの協力ができるディスカッションの場を設置しました。ぜひご参加ください。
リストURL:http://groups.yahoo.co.jp/group/biofueljp/

biofueljpグループに参加する
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